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2005年06月07日

icon小さい歌


 カバレフスキーの「小さい歌」の練習を漸う始めた。一昨日のヒラリー・ハーン嬢の演奏を観たことに触発されてのことである。あんな素晴らしい演奏には天地がひっくり返ろうとも、到達できる筈もない。けれども、ああ、自分でも何か演奏してみたいなあ、という気にさせるような、演奏だったのである。下手くそだって何だって、同じ阿呆なら踊らにゃ損々、という心境とでも言おうか。勿論、ヒラリー嬢が阿呆だという訳ではないので、念の為。いや、もしかすると、彼女も阿呆かもしれない。普通じゃないからね。何というのだろうか、音楽あるいはヴァイオリンの音というものにではなく、ヴァイオリンを演奏しているという行為にのめり込んでおり、その一方で、冷ややかに演奏全体をコントロールする別のヒラリー嬢がいる、というように、見受けられた。つまり、踊る阿呆と観る阿呆の両方を一人の女性が同時に達成させているわけであって、そんなことが出来るのは、神懸かりか阿呆に決まっている。……などと言うと、また、耄碌じじいが勝手なことを言っているよ、厭だねえ、という声が何処からともなく……。
 莫迦なことを言っていると限りがないので、敬愛するヒラちゃんのことは措いておくとして、「小さい歌」である。この曲は、僅か十七小節、楽譜に付属してきた見本演奏CDでは五十秒程。頑張ればちゃんと演奏できそうな気になっているじじいである。
 本日は右手だけの練習。手本の演奏を繰り返し聴いてから、取り敢えず、先頭から八章節目までをどうにかこうにか弾いてみた。暫く振りにピアノに触れるせいか、然程、難しいとも思われないのに、指が攣りそうになる。何とも情けない話である。三十分ほど悪戦苦闘して、余力を残して、本日の練習は終了。この、余力を残す、なんざ、気が利いてますな。はは、私も伊達に歳を取っていない、存外莫迦じゃない、などと自画自賛。暢気なものであります。
 練習をしたという、ただそれだけで、妙な達成感があり、今日の澤乃井は、また、一段と美味しゅう御座居ますな。ううむ、美味い。これでマリがいてくれさえすればなあ、などと思うけれども、幾ら思ったところで栓無きこと。思うことを止めなければいけません。何だい、楽しく呑み始めたのに、あっという間に湿っぽくなってしった。それでも、今日も酒は美味い。これは大きな大きな救いであります。

投稿者 nasuhiko : 2005年06月07日 19:03

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