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2005年05月04日

icon水てえもの2


 良次郎くん来訪。お蔭で、すっかり忘れていた水の検査の道具のことを思い出した。注文して届いていた筈であるが、さて、何処にしまったのだったか。年々記憶が曖昧あやふやになっていくのだが、中でも、この手の、ちょいとそこいらに置いた筈だが……というようなものが一番忘れ易い。尤も、こういうのは私だけでなく、同窓の連中も揃って同じようなことを言っている。だが、しかし、皆がそうだからそれで良い、というものでもないのであって、記憶なんざしっかりしているに越したことはない。いや、そうでもないか。難しいところですな。
 良次郎くんを待たせたまま、どたばたじたばた、彼方此方を引っ繰り返すのだが、中々見つからない。「探すのをやめたとき 見つかることもよくある話で」という、マリが探し物をする時によく口遊んでいた歌を思い出し、諦める方に傾きかけたとき、ひょっこりと出てきた「おいしい水検査セット」である。まるで、歌の通りであって、何だか莫迦みたいだ。こんなことなら、すぐに諦めれば良かった。そうは言っても、出てこなければ話が始まらないのも事実であって、まあ、これ幸い、と素直に喜びたい。いや、喜ぶべきなのである。
 これこれ、これですよ、とお見せすると、良次郎くんも興味津々の様子。早速、開封して、試してみることにする。いい大人……というより、明らかに老人でありますな……が二人掛かりで、嬉々として、さあ、じゃあ、一つ実験を開始してみますか、などと、燥いでいるのは、傍から眺めたら、嘸かし滑稽であったことであろうけれど、勿論、誰にも見られている訳ではないので構わない。
 まずは普通の水道水。銀紙の袋を開けて、中からプラスチックの筒が出てくる。糸が付いているので、それを引っ張ってから、ぎゅうっとへこまして、空気を追い出し、水に浸けて手を放す。そうすると、しゅうっと吸い込めるという仕組みである。押し潰すところで、何だか頼りない心持ちがして、些かすっきりしなかったけれど、やってみれば、何のことはない。
 さて、仕上がりはどうだろうかというと、水が桃色というか薄紫になるのであります。付録の帳面と比べてみると、なるほど残留塩素が0.1ほど含まれているということのようである。硬度の方も調べてみるが、こちらは50と100の間ぐらいだろうか。続いて、浄水器経由の水道水の番である。肝心なのは、こちらがどうなのかということである。さあ、残留塩素を調べますぞ。おお、おお、何たることか、驚くべきことに、水の色が全く変わらない。いや、もしかしたら、少しは変わっているのかもしれないけれど、老い耄れのしょぼくれた眼力では、変化がないとしか言い様がない。硬度の方はというと、こちらは先程と全く同じ。
 良次郎くんが、杉並の水は美味い、と言ったことが、証明されたような具合。折角だから、と、本日はジョニー・ウォーカーのスウィングをわざわざちょいと水で割って飲む。古市のハワイ旅行の土産である。尤も、彼の言葉をそのまま記せば「ワイハの土産よ」ということになる。七十過ぎたじじいが何がワイハだ、とは思うけれど、酒には罪はないし、味にも変わりはないので、ワイハ発言は水に流して、酒の方は胃の中に流して。
 次は、蒲田の水の番ですねえ、と残った「おいしい水検査セット」を抱えて帰っていた彼のこと、いずれ、検査結果を報告してくれることでありましょう。さてさて、蒲田の水の味や如何に……と呟きながら、未だにボトルを揺らしては、グラスを舐める。ずるずると呑み止められないじじいなのであります。

投稿者 nasuhiko : 2005年05月04日 20:05

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