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2005年03月17日

iconじいさん先生の言葉2


 麻田醫院のじいさん先生の言葉を、突然、思い出したので、折角だから、紹介しようと意気込んで書き始めた昨日、自身の記憶力低下を嘆く文字を重ねているうちに、すっかり件の文言を忘れてしまった、莫迦な老い耄れである。その教訓を活かして、本日は、本題をさっさと書き記そう。
 かれこれ三十年程も前の夏のこと。どうも小さな虫にでも刺されたようで、右足の親指の背の部分、ぽそぽそっと申し訳程度に毛が生えている辺りがぽちっと赤く腫れた状態になった。さして痛くも痒くもなく、そうそう気にせずに放っておいたのだが、眠っている間に掻いてしまったようで、翌朝になって見てみると、瘡蓋状になって、周辺も少々腫れている。それでも未だ、大したことないさ、と放っておくこと数日。中々治らないどころか、少々膿んできているような有り様に突かれ、重い腰を上げて麻田醫院を訪うことになった。
 先代のじいさん先生、眺めたり触ったりした挙句、大したことないなあ、ビタミン剤の塗り物と痒み止めの飲み薬ぐらいで良かろう、との御診断。ちょっとした虫刺されからここまで腫れるのは、何か別に大きな原因があるのではありませんか、と尋ねると、いやあ、そんなことはないよ、と鼻で笑われた。原因と言うならね、君の生活そのものですよ。それが良くないから、虫刺されも良くならない。私の言う通りの生活をしてくれれば、一週間もすればきれいに治ることを請け合いますよ、と仰る。別に難しいことじゃない。だけれど、人によっては難しい、無理だ、と言うんだ、とにやり。何をすれば良いのでしょうか、と尋ねると、刺激物を摂取せず、睡眠をたっぷり取り、あれこれと思い煩うことを止め給え、との御指示。そりゃ如何にも躰に良さそうだけれどね。当時は何だかんだと忙しく、睡眠は足りないし、仕事で責付かれ、ストレスも小さくはなかった筈である。じいさん先生の仰るところ、正に心当たりがあるのであった。しかし、これを改善するのは仕事がある限り、生半なことではなさそうであった。それで、残りの刺激物という部門で何とか頑張るしかないのかな、と思い、尋ねてみる。そうだな、主なところでは、酒、煙草、珈琲かね、と仰る。ああ、ああ、それは私の好物のベスト・スリーではありませんか。当時は煙草を日に百本以上吸っていたのだ。それを断て、とは、あまりにも厳しい、と思って呆然としていたところ、そうそう、食事もね、辛いものは駄目ですよ、と。このじいさんは、私から大好物を全て奪う気なのではないか、と思ったものですよ。どうだい、君ぃ、できそうかね、と尋ねられた私は、無理です、と即答した。そんなことでしょうな。それができるような人は医者には来ないものですよ、ははは、と笑う。だったら、精々、減らすようには心掛けなさい、それから、野菜をたくさん食べるように、と釘を刺されて、帰ってきたのでありました。その日から、なるたけ指示に沿うようにしていたら、実際、二日でほぼ治りました。その後、ビタミンの塗り物を数日塗ったら、もう跡形もなく、きれいになった。大したものだ。
 それに比べて、息子の方はと言えば、すぐに強い薬を出してきましたからね。そりゃ、私としては些か信用できない心持ちになったわけです。じいさん先生、私も嘗てのあなたと同じぐらいのじじいになりましたが、息子さんと私、どちらが間違っていますかねえ。

投稿者 nasuhiko : 2005年03月17日 19:32

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