2005年03月07日
福寿庵にて
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午前も終わる頃合いに田村師匠御来訪。昼が未だだということなので、一緒に福寿庵に出向く。師匠は笊、私は天抜き。冷酒をもらう。殆ど正午に近いとはいえ、午前中から結構なことである。未成年ではないのだし、午後から仕事があるわけではない。余所様に迷惑をかけるわけじゃなし、自分のお金で注文するのだし、事実、品書きにも冷酒と記されてあるわけなのだから、誰に遠慮する必要もない。誰に遠慮する必要もない筈なのに、日が高いうちから呑み始めるのは、何とは無しに気が引けるもの。それが午前中ともなると尚更である。しかし、しかし、である。午前中から、蕎麦屋でやっつける酒はうまいのであります。皆さんも、是非、お試しあれ。何故だか、殊更に美味いのでありますよ。
昼の忙しい時間を避けてくれた方がありがたい、と言われたこともあるけれど、店側としては、酒飲みは売り上げとしては悪い客ではないそうな。端的に言えば、儲かるんだよ、と。これは福寿庵の先代、つまり、坂本くんの意見である。ただ、昼時のサラリーマンにしてみれば、隣の席に酔客なんぞがいると気に入らない、ということもあるようで、できれば、昼時は避けてくれよ、時間はいくらでもあるだろ、と。そうは言っても、こちらにも腹の都合、咽喉の都合てえものがあるんだから、偶には、昼近くに寄せてもらうことになるのは致し方ない。
それにしても、早い時間から呑み始めるのに気が引けるのは何故だろう。長年の生活で染み付いた社会通念の故であるとしたら、何ともみみっちいものを身に付けてしまったことであるなあ。いやいや、理由は、やはり、御天道様に申し訳ないから、ということにしておこう。社会通念だの、良識だのって、あなた、そんなものが理由じゃ、幾ら何でもあまりに情けないではないか。
御天道様に申し訳のない午前中の酒であっても、今日のように、来客があれば、立派な口実ができるので、躊躇がない。どうでもいいことだけれど、呑み助の心にだって多少なりとも葛藤が備わっておるのですよ、葛藤してもしなくても、結局、呑むってことには変わりがないにせよ。
師匠とああだこうだと語り合って、半時間もしたところ、坂本くんが奥から出てきた。いつぞやは、昼時は避けてくれよ、と言っていた御当人が、私の隣に腰掛けて、呑み始めるのだから、とぼけている。まあ、気楽にやろうよ、などと、師匠に向かってお代わりを勧めている。師匠は自分勝手な酔いどれの老い耄れが二人になって目を白黒させてはいるものの、存外、楽しんでいるようでもある。まあ、こんな日もありまさあね。
投稿者 nasuhiko : 2005年03月07日 22:41
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