« 書きつ書かれつ | ホーム | 続・ヒントミント »

2005年02月06日

iconヒントミント


 またもや円嬢がふらりと訪れた。早い時間から早速一杯、と準備をしようとしたところ、暫くしたらアルバイトに行かねばならぬ、ということで辞退されてしまった。それ故、珍しく緑茶を挟んで相対す。
 私は肉体的にはアルコール中毒ではないつもりだが、精神的にはアル中なのかもしれない。飲酒をせずに他人様と対峙するのが頗る苦手なのである。矢鱈とあたふたして、しなくても良い失敗を重ね、動揺して、ますますあたふたする、そんな悪循環に陥るのが常。殊に、斯様なうら若き女性と対面していると、ただそれだけで鼓動が速くなり、息苦しくなる。もし仮に、この息苦しさが嵩じて、ここで心臓発作が起きてしまったら、彼女は第一発見者となってしまうわけで、そんなことになったら、警察の取り調べを受けねばならず、間違いなく、アルバイトに遅刻してしまうに違いない。そんな迷惑をかけるわけにはゆかぬではないか。しっかりしろ、耄碌心臓よ。

「これ、どうぞ」と彼女が差し出してくれたのは、銀色に輝く、金属製の薄っぺらい箱。ウィスキーの携帯用の金属製のポケット瓶みたようなものがありますな。あれと似て、少しく曲がっていて、西部を馬に乗って旅する孤高のガンマンがお尻のポケットに差し込むのに都合の良さそうな形状である。表には「Hint Mint」とある。彼女がするっと上蓋を滑らせると、中には、白い錠剤のようなものが並んでいる。彼女の勧めに従い、眼前の一粒を口に放り込むと、ほほう、すうっとする。すうっとする。看板通りのミントのお菓子である。幾久しくこんなものを食べたことがなかったので、比較と言っても怪しいものだが、今まで私が食したことがあるものと比べて、すうすうする度合いが強いようである。
「茄子彦さん、こないだのライヴんとき、ゴホゴホゴホゴホ咳してたでしょ。これ、いいのよ」
 ありがたい話である。私の如き、不機嫌そうにぶすっとしているばかりで女性にお愛想の一つも言えぬ無粋な者、そのくせ、酔っぱらうと調子に乗るような戯け者に対して、このようにお気遣い頂くとは、真に以て忝ない。にもかかわらず、素面では「どうも」とぼそぼそと呟くのが精一杯。ああ、情けない。ああ、酒が恋しい。

老咽にヒントミントの沁み亙り
 痰火を流し 涙も流る

 対面してはきちんと御礼を申せませんでしたが、たっぷり聞こし召しておる今、この場を借りて、改めて御礼を申し上げさせていただきます。重ね重ねの御配慮、実に感謝に堪えません。この御恩、一生忘れはしませんぞ。もっとも、私の一生なんざ、大して残ってはいませんけれど……。

投稿者 nasuhiko : 2005年02月06日 10:45

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://bokenasu.net/mt/mt-tb.cgi/91

コメント

コメントしてください




保存しますか?