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2005年02月21日
超高級味噌2
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木澤くんから電話がある。ぼそぼそとくぐもった感じで、どうにも声に覇気がない。尤も、老人が声ばかり景気良いってのも、あまり感心しないけれども。
「先日の味噌のことなんだけれどね」力のない声が続く。「どうもね、あれでね」「あれと言われても何だかよくわからんよ」「うん、それが、恥ずかしい話なんだけれど、どうもね、あれは、言ってみれば、詐欺というか何というのか」と穏やかでない方向に話が流れてゆく。気落ちしているところを、間の手で何とか盛り上げながら、全貌を聞き出した。
翌日、息子夫婦にも御裾分けてんで、木澤くん、呼びつけたわけである。どうだ、超高級味噌は美味いだろう、美味いに決まっておる、と鼻息荒く、自慢したりして……って、こんなことは私の推測だけれども、きっとそうに違いない。息子夫婦も、父さん、ありがとう、なんて言って、喜んで帰っていったに違いない。何とも長閑な家庭の図である。ところが、小一時間もした頃合いに、件の息子から電話がかかってきた。あれは詐欺紛いのインチキ商法に間違いない、と、えらい剣幕で、何であんなに高い味噌を買ったんだ、と説教されてしまったようである。味噌を御裾分けして説教されるというのもどうかとは思うのだけれど、きつく言わないと、これから先も、同じようなのがどんどん来るから気をつけなければいかん、と釘を刺すために、心を鬼にしての説教である、ということのような。息子くんによれば、一度、訪問販売の怪しげなのに引っかかると、引っかかった人の名簿というのが作られて、同業者の間で売買されるようになるそうなのである。何とも物騒な世の中である。
なぜ、彼の超高級味噌がインチキ商法だということになったか。息子くんが、日本一の味噌ならインターネットに能書きか何かが載っているだろうてんで、調べてみたのだある。ところが、まともな情報がみつからず、結局、行き当たったところには、その味噌屋は、中身云々は兎も角としても値段は非常識極まりないもので、決して勝っては駄目だ、というような忠告めいたことが書かれていたそうである。この不景気な御時世に、超高級味噌の訪問販売をやっている業者が何軒もあるそうだ。それというのも、味噌は食品だということで、クーリング・オフが効かないから、っていうんだから、連中も気が利いている。悪知恵を誉めてはいかんのだろうけれど、うまいところを突いておりますな。信州から来ました、なんて、純朴そうな顔をして、訪れたそうだけれど、心の中では舌を出していたにちがいない。
中身は大丈夫だろう、と木澤くんがぼそぼそと呟いていたけれど、何となく、もやもやするので、あの味噌は全部捨ててしまった。いやあ、それにしても、何とも厭な世の中になってしまったものでありますなあ。
投稿者 nasuhiko : 2005年02月21日 22:21
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