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2005年02月19日

icon超高級味噌


 珍しく、木澤くんに誘われて『白木』へ。他に客もいないので、他愛ない話をしながら、静かに呑む。なぜか、この店ではいつもサントリーのウィスキーを飲むことになる。実際、この、角地に立つ、かなり古びて、少々狭苦しい店構えには、それが似合うのだ。中でもダルマがしっくりくる。傲り好きで、かつ、高い物好きの古市がいるときには、山崎をオン・ザ・ロックで、ということになるのだけれど、この店ではダルマのボトルを入れて、水割りでちまちまゆっくりやるのが一番だ。時代から取り残されたようなこの店で、時代から取り残されたようなじじいどもが、時代から取り残されたと言うと怒られてしまう元美人ママを相手に、ダルマの水割りをのんびり呑む。近頃は若い友人たちと呑む機会が多いけれど、同窓の面々でグラスをぶつけ合うのは、また、別の味わいがある。年寄り同士でしか分かち合いようがない空間、時間というものが確かに存在するのである。
 場がぼんやりと和み始めた頃、「実はさ、今日は、味噌をおすそ分けしようかと思ってね」と木澤くん。「お味噌のおすそ分け?」と素っ頓狂な声を出すようではママも少々酔いの入り口ほどまで来ているのかもしれない。
 先日、木澤くんのところに信州からの味噌屋というのがやってきたそうである、日本一を受賞した味噌を近所に納品したついでに、御挨拶ばかりに、と。上さんが応対したそうだが、何でも、すらっとした色男で語り口も滑らか、気の利いた若旦那みたような風貌の青年が、熱心に熱心に説明してくれたそうな。熱意に絆され、とうとう買ってあげたそうだが、何分、量が多い。十六キロの樽状のものを買ってしまったそうで、置き場には苦労するし、運ぶのにも難儀する、という具合だそうで、とてもじゃないが、老夫婦二人じゃ永遠を何度か繰り返したところで喰い切れまい、と、あちらこちらにお裾分けと相成っている次第のようである。具体的な値段は聞かなかったけれど、兎にも角にも、目ん玉が飛び出るような超高級味噌である由。ありがたく頂戴した。早速、その場で、白木のママが胡瓜に添えて出してくれたが、如何せん、アルコールで麻痺した舌。超高級味噌の美味さがわかるわけもないが、泥酔していても値段の有り難みは判るわけで、三人で、流石は超高級品だ、なぞと笑い合いながら、胡瓜を食す。ダルマを呑む。胡瓜を食す。ダルマを呑む。胡瓜を食す。ダルマを呑む。胡瓜を食す。ダルマを呑む。ああ、限りがない。

投稿者 nasuhiko : 2005年02月19日 15:10

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