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2005年01月10日

icon謎の物体


 相も変わらず、天気が良い。徹底的な冬日和が続く。毎日毎日、早い時間から澤乃井を傾ける。こんなことになってしまうのも、澤乃井がすっきりと美味いからいけないのだ、などと、やけくその八つ当たり。昼日中から飲んだくれていたとて、誰に迷惑をかけるわけでもなし、御当人は至って良好な気分で過ごしているわけであり、八つ当たる理由は、全くない。寧ろ、ありがたい話である。現代の東京にも、美味い酒や美味い醤油、美味い蕎麦なんぞをこつこつと作っているところがあるというのは、大きに感謝すべきである。
 午後、程好くほろ酔い加減で、愛用のデジタル・カメラを持って表に出る。説明書を読むと恐ろしくいろいろなことができるようであるのだが、私の老いさらばえた頭脳では用法が記憶できず、こんなときには何か設定をいじればいいのだろうなあ、と思いながらも、吊るしのままで使っている次第。それでも、田村師匠が選んでくれたものだけあって、大変美しい写真が撮れて満足満足大満足。今日も満足、明日も満足。
 カメラを手にして、ぶらぶらぷらぷらと歩いてはシャッターを切る。構えた手元が酔いゆえにゆらりゆらりと定まらぬ。まあ、かまわない。ぴんぼけも人間様がそこに介在しているという味である、などと、戯言を呟きながら。しかし、天気は良いけれど、外は寒いね。指が悴みまさあね。ただでさえ不器用な指先がますます言うことを聞かなくなる。こんなことで悪戦苦闘したってしょうがないんですけどね。
 次第に寒さが募り、いくら何でも堪え難い段階に達したので、我がおんぼろの庵に千鳥足を向ける。美しい夕焼けになりそうだ、そんなことを思いながら、進行方向正面、西の空を見上げると、何だかわからないけれど、銀色に燦然と輝く物体がゆったりと音もなく動いている。その光があまりに激しいので、正確な形状は見て取れぬのだが、円盤型とでも言うのだろうか。そうだ、円盤型なのである。何となれば、あれは、どう考えても空飛ぶ円盤だからである。おお、おお、ついに、と思いながら、足を速め、少しでも近づこうと思う。あとになって考えれば、少しぐらい早足で歩こうとも、飛行物体に追いつくはずなどないのだけれど、その瞬間にはそれだけの知恵も回らず、すたすたすたすた、とできる限りの早足で。しかし、その目眩かす代物は、瞬きをした隙にどこかへ消えてしまった。
 あれは、あれは一体何だったんだろうか。何だったんだろうか、と疑問形で記しているが、実のところ、あれは空飛ぶ円盤、所謂、宇宙船ではないか、と強く思う。孰れにせよ、あれは世に言う未確認飛行物体であることは間違いない。だって、既知のもののなかには、外形が判然とせぬほど輝きまくっている飛行物体などありません。音のしない飛行物体だってありません。突然消えてしまう飛行物体だってありません。ああ、しまった。何たることか。私は、その時、手にデジタル・カメラを持っていたのだった。持っていたのに、あまりの出来事に我を忘れ、レンズを向けるどころか、無駄に早足で追いかけてみたりして、もう完全にばかである。しまった。しまった。ああ、いやになる。

冬日和 謎の物体 西空に
 指も悴み 脳も悴み

投稿者 nasuhiko : 2005年01月10日 17:42

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