2004年11月22日
風邪3
合成ペニシリン製剤や解熱鎮痛消炎剤といった薬がどういうものか、実のところ、ピンとはこない。尤も、医学の知識などあるわけではないのでわからないのは当然だ。それに、そもそも、風邪の根本原因は解明されていないのであるからして、その対処法にしたところで、経験に基づくものでしかあるまい。わけのわからないものをありがたがって服用させていただいているわけである。考えてみれば、原始信仰的な方法論である。シャーマンに祈ってもらうのと、本質としては何ら変わらない……と、ここまで言っては言い過ぎだろうか。ごめんよ、若先生。
孰れにせよ、私の躰の中で一体何が起こっているのか、わからないまま、風邪が始まり、終わろうとしているようである。
今まで味わったことのない高熱が治まってくると、眩い幻想も鳴りを潜めてしまった。残念なような気がしなくもない。だが、七十年間に味わったことのない不思議な経験ではあるにせよ、是非、引き続き味わいたいと思うほどの、中毒的な魅力を持っているものでもない。
幻想そのものが引っ込んでしまうのはかまわない。気になるのは、あの幻想はどこからやってきたものなのだろうか、ということである。どこからと言ったって、ちょいと失礼しますよ、と他所から入ってくる筈もないわけで、畢竟、あれも私の中のどこからか現出したものなのであろう。そう思うと、あのような極彩色で超高速な……何という見苦しい形容だろう……空間を想像する力が私の中にあるのだ、ということになる。まだまだ、私の脳の中には未知の部分、七十年以上使ってきても未使用の謎の領域が残っているのだな。
私の中に未知の領域があり、そこには私の知らない何かがまだまだ隠されていると考えると、何となくにやにやが止まらない。乏しい可能性を消費し尽くして、立ち枯れるのを待っている老体なのではなく、まだまだ清らな可能性を秘めた、そんなじじいなのであるぞ、私は、とね。
何を言っておるのだ、この耄碌じじいが……そんな声が聞こえて参ります。
投稿者 nasuhiko : 2004年11月22日 00:00
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